2014年7月


 法人役員の予選問題(2014年7月26日・vol.197)
 巷では高校野球の予選もチラホラと終っているようですが、司法書士の仕事の中で「予選」といえば、思い浮かぶのは各種会社や法人(以下、「会社等」といいます。)の登記業務における役員の予選問題です。会社等の役員の予選とは、簡単に言いますと「将来の一定の時期に就任する予定の役員を予め選任すること」をいいます。役員の選任は、法律や定款において各種の会社等毎に決められた方法で行わなければならず、その方法はというと、ほとんどが各種総会(株主総会、社員総会等)や役員会(取締役会、理事会等)において選任する方法によることになりますが、会社等の組織の規模、構成員の属性、活動内容、役員の任期形態等によっては、必ずある一定の時期でなければ総会等を開催して役員を選任することができない(結果、必然的に予選になる)ケースもありますので、役員選任の実務において、予選問題を考えることは非常に重要です。

 さて、なぜ予選「問題」と述べているかといいますと、予選の時期や内容によっては、予選した役員の就任登記が登記実務上受け付けられないケースがあるからです。以下、予選した役員の登記が認められない主なパターンを挙げてみます。

@ 役員を予選(選任)した日から将来の就任日までの期間が比較的長期になる場合(先例:昭和41年1月20日民事甲271号回答参照)
 ※ ただし、一般的には、予選から就任までの期間が短く(登記実務における相場としては1か月程度が目安とされています)、予選することに合理的な理由があり、予選時と就任時で役員を選任する会社等の構成員に著しい変動がなければ有効であるとされています。

A 例えば、株式会社の代表取締役を取締役会(又は取締役の互選)によって予選(選定)する場合において、予選時の取締役と就任時の取締役で構成員が異なる場合(登記研究221−48、同701−207)
 ※ 株主総会で改選前の取締役が将来の新しい代表取締役を予選した場合で、代表取締役の就任時点で予選を行った改選前の取締役が全員再選しているような場合はOK.ということになります。


 では、実際、予選した役員の登記の可否に関する実情はどんなものかといいますと、一応上に述べましたような基準はあるので無制限ではありませんが、ケースバイケースで登記の可否にも一定の裁量幅があるはないかと個人的には思います(ただしAのケースはほぼ不可)。したがって、もし、予選役員の登記の可否で問題が生じた場合は、当該会社等の実情を登記所によくよく説明され納得(?)してもらえるかどうかだと思います。


 因みに、私の実務経験上で予選役員の登記が認められたケースで、予選から就任までの期間が最長期のものはといいますと・・・・そこのところは企業秘密ということで。