2024年11月


 突っ込んでお聞きする(2024年11月13日・vol.396)  

 先週、消費者問題解決の実務に関する研修会を受講しましたが、最近の消費者問題を解決するためのスキルとしては、関連する法理論や相手方業者との交渉方法を知っていることは当然として、消費者が実際に被害に遭う形態(システム)を理解しておくことは必須であるとのこと。特に近年の消費者取引のデジタル化に伴い、被害に遭うのもデジタルの世界(SNSなど)で起こっているケースが多くなっており(主に若年層かと思いきや、中年層も然り)、このデジタルによる種々の契約、金融等のシステムの理解なくしては、相談もおぼつかない場合があろうとのこと(例えば、LINEで投資、副業、占いの詐欺被害・トラブルに遭った人の相談を受けるには、まずはLINEのシステムを理解している必要があるということ)。

 当然、被害の証拠もデジタル化しているわけなので、当のシステムの理解がないと、証拠収集もおぼつかないことになるのでしょう。

 さて、令和6年4月施行の相続登記の義務化もあってか、最近の司法書士会開催の無料相談会では、相続(登記)に関する相談がほとんどを占めているように感じます。

 ここで、相続に関する相談となれば、当然、被相続人の方の死亡を前提に相談が始まるのですが、私の場合、念のため「死因」についてもお聞きするようにしています。聞く側からすれば、なかなか聞きづらい事柄ですし、聞かれる側からすれば、「そこまで突っ込んで聞かれるのか」と思われることもあるかもしれませんが、お聞きするのにはそれなりに理由はあります。

 まず、@死因が事故の場合、相続に関連して保険金請求(権)や損害賠償請求(権)の問題に派生する可能性があります(例えば、交通事故死)。

 また、A死因が自死の場合、損害賠償(義務)、延いては相続放棄の問題に派生する可能性があります(例えば、自死現場が賃貸建物の場合、貸主からの原状回復費、将来賃料相当額等の請求)。
 また、B死因が事件の場合、相続欠格該当性(民法891条1号・2号)の問題に派生する可能性があります(例えば、相続人による殺人事件)。

 いずれも稀に起こりうることを想定しての質問ですが、仮にそうであれば、相談に対する回答内容も大きく変わってきますので、聞きにくくても聞かなければならないことであると思います(この点、死亡診断書の写しを拝見できればベストでしょう)。

 聞きにくい質問でいえば、ケースによっては、相続人の方の負債状況(住宅ローン等)についてもお聞きすることもあります。被相続人が相続人の負債について連帯債務者連帯保証人になっているケースがありますが、これらは割と失念されているケースがみられるからです。

 ほかにも、突っ込んでお聞きする事項はケースに応じて盛りだくさんです。

 というわけなので、相談者の皆さんは、想定外の突っ込んだ質問をされても、お気を悪くされず、むしろ鋭い質問をされることに安心感・信頼感を抱いていただければ幸いです(相談員のちょっとした願望?)。