2025年8月


 時効債権の取立に対抗する(2025年8月21日・vol.407)  

 某消費者問題情報誌を読んでいると、相変わらずサービサーや債権管理会社等による消滅時効が完成した譲受債権の取立行為が行われているようですが、実感としてもこの手の事件はいまだに減っていないように感じます(もう10年以上前から言われていますが)。
 簡易裁判所管轄の事件が割と多いので、司法書士にも割とよく相談があるのではないでしょうか、ということでちょっと触れてみましょう。

 この手の事件のリーディングケースとして、昭和41年4月20日最高裁大法廷判決がありますが、業者はこの判例をもとに、債務者に対し、まずは手紙、電話等でアプローチをしかけ、話が通じてくると、次はあの手この手で債務の承認(民法152条1項)らしき行為(一部弁済、和解等)をさせ、これにより時効の援用権を喪失させたとみると、今度は一括弁済の請求を支払督促等で仕掛けてくるのがよくあるパターンです。

 よって、債務者側の対応としては、業者からの何らかの接触があった場合、不用意な対応(債務を認める、返済の約束、一部返済等)をせずに、最初の段階ですぐに専門家(弁護士か司法書士)に相談するのが肝要です。債務の承認等の争点がなければ、時効援用の内容証明通知一本で解決する場合もあるため、相談が早ければ早いほど経済的にも有利だと思います。なお、不用意な対応はしないといっても、そのまま放置するのは避けた方が無難でしょう(取立行為がエスカレートするだけだと思いますので・・・。)。

 また、仮に債務の承認らしき行為をした後であっても、債務者側が勝訴している近年の多数の裁判例を参照することで、この手の事件の最近の傾向はある程度見えてきていますので、業者からの取立行為(催告、支払督促、訴訟等)に対して、あきらめる必要は全くないと思います(もちろん、結果が個々の事件の具体的な事情によることは言うまでもありませんが)。

(参照裁判例)
 たくさん有り過ぎますので書きません(これだけで心強いと思いましょう)。