2018年8月


 会社法人等番号の功、司法書士の不幸?(2018年8月20日・vol.276) 

 最近、知らない電話番号からの着信があっても電話に出ないという方が増えていますが、これって明らかにしつこい勧誘電話(通信関係、投資関係、儲け話等)や犯罪絡みの電話(詐欺、悪質商法等)のせいですよね。司法書士の業務の関係で行う電話にもなかなか出てもらえないことが多くなっているような気がします。困ったもんです。

 さて、今回のお話ですが、不動産登記の申請手続において、当事者(登記権利者、登記義務者、利害関係人等)が会社等の法人(以下、単に「法人」といいます。)の場合、従来は法人の代表者の資格証明書として、法人の登記事項証明書の添付が要求されていましたが、平成27年11月2日からは、この紙の資格証明書に代えて、会社法人等番号(法人の登記事項証明書の一番上の欄に記載されている12桁の数字)を申請書(申請情報)に記載(記録)する方法で提供しなければならないことになりました。そして、このように登記申請の方法が変わったことで、法務局へ提出する紙の量が減り(エコロジー)、また、登記所においては、提供された会社法人等番号をもとに法人の登記情報にアクセスし、実際の審査の時点での法人の代表者の資格の有無等を確認するようになりました(より実体に即したリアルタイムの審査が可能?)。また、この会社法人等番号を提供することにより代替できるのは、申請人たる法人代表者の資格証明書に限らず、@法人の住所証明書、A本店、商号等の変更証明書、B第三者の許可等を証する書面の提供に係る当該第三者の代表者の資格証明書、C合併等による承継証明書、D非課税証明書、など多岐にわたりますので、これらに該当する場合においては、添付書類のスリム化が一層はかられることになります(なお、代替できるのは現在の会社法人等番号をもって登記情報から判明する範囲に限られますので、番号が異なる比較的古い時期の変更事項等についての証明は、紙の証明書が必要となります。)。因みに、印鑑証明書については会社法人等番号で代替できませんので、注意が必要です。
 さて、続いて、今度は、会社法人等番号を提供する方法に変わったことにより、司法書士的に困っている点(不幸)について、主なものを以下に挙げてみます。

1.不動産の登記申請と法人の登記申請(役員変更等)の時期がかち合った場合、法人の登記が完了するまで、不動産の登記申請の審査が止まるため、不動産登記の完了までに時間がかかるようになった(法人登記が登記所の繁忙期や補正等の影響で停滞していると簡単な登記でも2週間たっても終わらないこともあります。)。

2.上記1の場合で、法人登記申請の内容が不動産登記の申請人である代表者等の変更であった場合、不動産登記の申請内容に影響するため、場合によっては不動産登記申請が補正になる可能性がある。

3.司法書士への依頼時において、依頼者の法人が過去に合併、本店移転、商号変更等をしていても、依頼者からは会社法人等番号しか提供されないため、司法書士においてこれらの情報をあらためて調査しなければならない(番号だけじゃ過去の経緯は全く分かりません)。
 
 という具合で、手続的には簡略化されましたが、登記審査がよりリアルタイムになった分、登記申請者の代表権(代理権)の有無やその時期については、以前に比べてかなり神経を使うようになりましたね。