2024年12月


 司法書士業務に関係する最近の最高裁判例(2024年12月13日・vol.398)  

 久々に裁判所ホームページで判例検索をかけてみると、最近のものとして次の判例が出ていました。最近義務化された相続登記に関連する事案なので、司法書士業務に直結するということで以下ご紹介します。

令和6年11月12日最高裁判所第三小法廷判決
判事事項
被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができない

 詳細は、裁判所HPで確認していただくとして、要は、まず@「いわゆる養子縁組前の養子の子」が養子を代襲して被相続人を相続できないこと(被相続人との間に血族関係を生じないため直系卑属にならない)を確認したうえで、A親を共通する実子(被相続人)と養子(被代襲者)において、亡養子の子(縁組前に出生)は同様に共通親や実子と血族関係を生じない(共通親の直系卑属にならない)ことを確認し、判事事項の結論が出されたようです(間違っていたらすみません)。

 それなりに業歴のある司法書士であれば、本事案類似の相続関係に基づく相続登記手続を経験したことのある人は結構いると思われ、この結論については、「まぁそうだよねぇ〜」というのが率直な感想です(法務局相手に仕事をしているのだから当然か)。

 反対に、これが原審の高裁判決の結論になると、過去の仕事の結果に疑義が生じることになるため、司法書士的には結構冷や汗ものの事案ともいえるのではないでしょうか。




 相続財産法人の登記義務の履行問題(2024年12月3日・vol.397)  

 今年も最後の月となりました。この忙しない12月に会議やら研修会やらがやたらと多いのはなぜだろうと例年不満に思っておりますが、これも忙しないの一環なのでしょう。

 「相続人が不存在である被相続人から生前に不動産を購入し代金を支払ったが、所有権移転登記をする前に被相続人が死亡したため、登記未了である。どうすればよいか。」

 無縁社会化が進行する近年ではありがちな問題でしょう。

 この場合、相続財産は相続人に承継されることなく自動的に法人を形成しますが(民法951条)、法人の代表者がいないので、家庭裁判所に相続財産清算人の選任申立てを行い、選任された清算人に登記義務の履行を求めるのが一般的なセオリーです。

 司法書士的には、自らが相続財産清算人となって関与する、あるいは、相続財産清算人から依頼された個別の登記手続に関与する、というのが事件関与のパターンです。

 ここで、この生前の処分行為に関する相続財産法人(相続財産清算人)の登記義務の履行については、次の最高裁判例があるため、安易に登記手続を行ってはならないという問題があります。
 
〇 平成11年1月21日 最高裁判所第一小法廷 判決
 要旨:被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することについて、相続債権者は、被相続人から抵当権の設定を受けていても、被相続人の死亡前に仮登記がされていた場合を除き、相続財産法人に対して抵当権設定登記手続を請求することができない(詳細は最高裁ホームページで検索・参照)。

 上記判例は、(根)抵当権設定登記の事例ですが、先の所有権移転登記の場合であっても同様の問題があるため、検討しなければならないとの見解があります(書籍:「新訂版・不在者・相続人不存在財産管理の実務」を参照)。

 よって、相続財産法人(清算人)としては、登記義務を履行するか否かは、相続財産や相続債権者等の内容を十分に吟味したうえで判断しなければならず、また、個別の登記手続の依頼を受ける司法書士としても、相続財産清算人に対してその辺りの情報提供を一応受けておくべきではないかと思います(余計なトラブルに巻き込まれないために)。