2020年3月


 依頼者以外の第三者に対する司法書士の責任(2020年3月20日・vol.306)  

 「非監護親(養育費支払義務者)に子供を会わせたくないので、養育費はいらない」、「養育費を払ってもらっていないから非監護親(養育費支払義務者)に子供を会わせない」との監護親側の言い分はよく聞かれるところですが、某統計調査の結果によると、「面会交流が実現していると、養育費の支払いも実行されている」傾向が見て取れるそうです。定期的な子に対する愛情の実感が支払いの継続に繋がる、ということなんでしょうか。

 さて、つい先日、司法書士のお仕事に関する下記の最高裁判所の判例が出ておりました。
 
〇 令和2年3月6日最高裁判所第二小法廷判決

 事案は、いわゆる地面師事件(本人確認資料や印鑑証明書等を偽造して不動産の所有者本人になりすました詐欺師が不動産を勝手に売り払って売買代金を詐取する事件)みたいな詐欺事案のようですが、数次の売買にともなって数件の登記申請を行う場合において、一部の登記申請(後件申請)について委任を受けた司法書士は、自身が委任を受けた登記申請以外の関連する登記申請(前件申請)について申請当事者の本人性に疑念が生じた場合は、その点について自ら調査等を行い、依頼者以外の第三者に対しても適切な処置(助言、勧告等を行うことによる注意喚起)をとる義務があるのか、が問題になったようです。
 詳細は、裁判所HPをご覧いただくとして、結論としては、原則、委任者に対するのと同様の責任を委任者以外の者に対して負うことはないが、司法書士の職責上、具体的な事情によっては、責任を負うこともあり得るといった感じでしょうか。