2015年6月


 電子供託、便利なもんです(2015年6月27日・vol.224) 

 最近久しぶりに金銭供託(簡単に言うと、家賃や代金等の金銭を本来支払うべき相手に支払うのが困難なため代わりに法務局に対して金銭を納めることによって債務の履行を果たす制度)の手続をしました。登記申請をはじめ、最近はもっぱら電子申請が推奨されていますが、供託についてはこれまで電子申請をしたことがなかったため、最初は紙申請にしようかな(消極)と考えていましたが、供託金の納付に関しては電子申請が便利なようなので、今回は電子申請に挑戦しました(積極)。以下、供託申請に関して紙申請と電子申請を比較した結果です(なお、事案は休眠抵当の債務弁済供託です)。

(紙申請の場合)
1.供託申請の日程等について法務局と事前打ち合わせをする。
2.供託予定日に法務局に供託申請し、供託金の納付書をもらう。
3.納付書を持って銀行(日銀代理店・篠山なら三井住友銀行)に行き、納付する。
4.領収証をもって再度法務局へ行き、紙の供託書正本を受領する。
5.紙の供託書正本を事務所に持ち帰って、原本還付処理をしたうえで抵当権抹消登記の申請書(電子申請なら申請情報)に添付する。
6.またまた法務局へ行き、抵当権抹消登記を申請する(電子申請の場合は、添付書類を持参または郵送する。)。

(電子申請の場合)
1.供託申請の日程等について法務局と事前打ち合わせをする。
2.供託予定日にパソコンで供託を電子申請し、供託金も電子納付する。
3.法務局から電子供託書正本をパソコンでオンライン取得する。
4.電子供託書正本を抵当権抹消登記の電子申請情報に添付し、法務局に抵当権抹消登記を電子申請する。
5.法務局に抵当権抹消登記の添付書類(供託書正本を除く)を持参又は郵送する。

 比較してみて思うことは、電子申請の方が、供託日当日以降の事務手続が圧倒的に楽です。事務所のパソコンの前で供託申請、供託金の納付、供託書正本の受領、登記申請までの作業が可能です。
 こりゃ〜、もう紙申請には戻れません。
 ちなみに、供託を電子申請した場合でも、電子供託書正本のほかに紙の供託書正本(これをみなし供託書正本というそうです。)も発行してもらうことが可能ですので、供託の事実を証明する証拠書類の面でも特に問題はなさそうです。


 初診は念入りな調査が必要です(2015年6月24日・vol.223) 

 毎年6月といえば3月決算の会社の定時株主総会とそれに伴う役員変更等の商業登記申請手続のご依頼が増える時期ですので司法書士はかなり忙しい時期ですが、そんな中、これまでは自社であるいは他の司法書士事務所に依頼して商業登記申請手続をされていたところ、今期より初めて当事務所に役員変更等の登記手続を依頼される会社様もいらっしゃいます。そして、その場合、会社様からみればこれまで行ってきた会社法務(株主総会の開催等)とそれを基にした登記手続をするだけだから簡単に、早く、安くできるであろうと思われがちですが、司法書士側からみれば、あくまで初めて登記手続のお仕事をさせていただく会社であるため、一から会社の詳細な情報を教えていただいたうえで、その情報をもとにある程度の時間をかけて一定の検討をしてから登記手続にとりかかる必要があります。そのようにしなければ、法令に則った誤りのない正確な登記をすることができないからです。医療でいえば、かかりつけの病院を変更して違う病院にかかった場合には、初診として一から診察、検査等を受けなければならないのと同じです。
 そんなわけで、例えば、当事務所では、初診の会社様からのご相談、ご依頼をお受けする場合は、原則として以下の資料のご提供をお願いしております。
 
 1.会社登記履歴事項証明書(法務局で最新のものを取得して下さい)

 2.会社の現行定款

 3.株主名簿(全株主とその持株数、株式の種類がわかるもの)

 4.前回の役員変更時の株主総会議事録等(役員の選任時を確認できるもの)

 ※ 依頼内容等により他の書類の提供をお願いすることもあります。

 会社の登記は、その会社と取引をするための基本情報なので正確な内容を登記する必要がありますし、もし誤った登記をした場合にこれを訂正するのはなかなか大変ですので、会社・法人の登記手続の依頼を受ける司法書士としては、初診時は特に会社に関する必要十分な情報のご提供をいただきたいところなのです。
 もっとも、「かかりつけ」の司法書士になりましたあかつきには、司法書士の側においても会社に関する基本的な情報は把握しておりますので、以後のご相談ご依頼はスムーズに運ぶことになるのでしょう。


 戸籍謄本の請求と請求理由の記載(2015年6月13日・vol.222) 
 
 市役所等に行って自分の戸籍の謄抄本、証明書(以下、「戸籍謄本等」という。)を取得する場合、備え付けの用紙に必要事項を記載して窓口に提出することで交付の請求をするのが通常ですが、この請求用紙には、請求の理由(使用目的)を記載する欄が設けてあります。
 さて、この請求の理由欄についてですが、まず、戸籍に記載されている者(本人)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属が、本人の記載された戸籍謄本等の交付を請求する場合は、理由を記載する必要はないとされています(戸籍法10条1項、条文上制限がないため「原則公開」)。ただし、市町村長は、請求が不当な目的(嫡出でない子であることや離婚歴等他人に知られたくないと思われる事項をみだりに探索し又はこれを公表するなどプライバシーの侵害につながるもの、その他戸籍の公開制度の趣旨を逸脱して戸籍謄本等を不当に利用する場合)によることが明らかなときは、これを拒むことができるとされています(戸籍法10条2項)。
 一方、上記以外の者(第三者)については、戸籍法で定める一定の場合において、一定の理由を明らかにした場合に限って戸籍謄本等の交付の請求をすることができる、とされているため(戸籍法10条の2第1項各号、原則非公開)、請求する際は請求用紙に理由を記載しなければなりません。
 というわけで、例えば、Aさんが記載されている戸籍謄本等について、Aさん、Aさんの配偶者、Aさんの親、Aさんの子や孫が請求する場合は、請求用紙に請求の理由(使用目的)を記載する必要はないはずです。
 ところが、実際、この場合において、市役所等の窓口において理由を記載せずに戸籍謄本等を請求すると、かなりの割合で請求の理由を聞かれ、理由を記載するように言われます。「法律上は不要なんじゃないの?」と、ちょっと食い下がってみても、割としぶとく理由を記載するように言われます。
 何故という感じですが、唯一思い当たるとすれば、先の戸籍法10条2項の「不当な目的」ですが、100歩譲っても、自分の戸籍謄本等を請求している場合に請求の理由の記載を求めるのは明らかにおかしいです。むしろ、このような場合に請求の理由の記載を求めること自体プライバシーの侵害ではないかと思います(あまり他人に言いたくない事に使用することも割と多いのではないでしょうか)。
 お役所の窓口で押し問答していても仕方がないのですが、あまりに平然と「理由を書け」と言われると、何でもかんでも一律に理由を要求しているのかと思いちょっと反抗したくなります。いっそ、理由欄に記載不要と記載して請求するのもいいかもしれません。