2018年3月


 改正民法と保証問題(2018年3月9日・vol.269) 

 改正民法(債権法)が平成29年5月26日に成立し、平成32年4月1日(その頃はもう平成じゃないでしょうけど)に施行されることが決定しました。そんなわけで、巷の法律情報誌では改正民法の記事が目白押しです。
 さて、今回の改正では民法の保証に関する規定も改正の対象となっていますが、個人的には1番改正して欲しいところが改正されておりません。
 まず、第三者による個人保証については、一定の制限を設ける規定が新設されましたが、全面的な禁止には至っていません。理由は事業向け融資等の経済活動への悪影響があるからだそうです。
 次に、保証債務の相続の問題については、特に立法的な手当はされませんでした。個人的な保証債務については家族に秘密にしていることも多く、また、生前の家族関係が希薄だと書類でも残っていない限り保証債務の存在について知る機会がありません。よって、相続発生後においても、主たる債務者の債務不履行によって保証債務が顕在化しない限り相続人には保証債務の存在がわからないことも多いのです。そして、相続発生から数年が経ったころ、突然、「あなたのお父さんが保証人になっておられた債務(他人の借金や家賃等)に不履行がありましたので、相続人の皆さんでお支払い願います。」と多額の延滞金を加えた金額の請求がどこからか飛んでくるわけです。そうなると、相続人は、すでに遺産に手を付けてしまっている状態ですが、今からでも相続放棄ができないかを検討し、それができなければ保証債務を支払わざるを得なくなります。わかっていればすぐに相続放棄したのに・・・と悔やまれることになりますよね。この保証債務の相続の問題については、今回は手付かずという結果になったわけです。
 第三者の個人保証が禁止されれば保証債務の相続の問題も将来的には解決しそうですが、残念ながら、相続人の皆さんは、今後もあるのかないのか分からない保証債務について悩まされながら相続するか否かの判断に迫られることになりそうです。