A 次に、@を提供する以上、関係相続人全員の印鑑証明書の提供は要しない(調書に押印は付いていないのでしても意味がない)ことになりますが、それでもって遺産分割の真正な成立を担保できるのかを一応考えますが(上記3の検討事項の絡みもあるので)、ここはもう地裁(簡裁)の関与のもとで成立した和解内容である遺産分割に基づく登記申請であることを前面に出しますので、法務局もスルーしてくれるでしょう。
B 最後に、被相続人にかかる相続関係を証する戸籍資料一式の提供を要するか問題ですが、これは基本的に必要と考えます。地裁や簡裁での訴訟上の和解手続は、家裁の遺産分割調停や審判手続とは異なり、裁判所が職責として相続人全員の確定作業をしているとは限らないので、法務局側としては、相続人の確定資料として戸籍資料を要求してくるのが通常と思われるからです。これを言うと、和解調書に「参加者全員は、参加者が相続人の全員であることを確認した」との記載があるから戸籍資料は省略できるでしょ、と言われることがありますが、確認したのはあくまで和解手続の参加者であって裁判所ではないのでは?というのが、個人的反論ですが、如何に?
C 最後にと言っておきながら、もう一つおまけで、家裁での遺産分割調停でも同じですが、裁判所の調書の記載から、複数の当事者(相続人)を一人の弁護士が代理して和解期日で和解を成立させている場合、「これって双方代理(民法108条1項)じゃないの」と考え、登記手続の際に法務局から指摘されないか心配になる方もいるかもしれませんが(私は昔思いました・・・)、その辺は裁判所の手続の中で当事者本人から予め許諾が得られているはずでしょ、ということで登記手続の際に指摘されることはないのが通常でしょう(なお、裁判外での遺産分割の場合は要注意)。