2025年1月


 相続人不存在の場合の清算型遺贈と登記手続(2025年1月8日・vol.399)  

 明けましておめでとうございます。
 今年も月1回は何か書きたいと思います。

 「司法書士は利益相反に対する感度が低い」なんて趣旨の苦言を従来からよく耳にします(特に裁判所や弁護士さんから)。最近では、裁判所で選任される財産管理人等の申立てにおいて、候補者自薦(正確には推薦しているのは依頼者である申立人であって書類作成をしている司法書士ではないのですが、周りからは事実上自薦に映るものなのでしょう。以下、こういう意味で自薦とします。)をしていることについての指摘を耳にしました(書類作成支援をする司法書士は、申立人である依頼者と大きな利害関係があるのに、その申立人(依頼者)と以後事件の当事者の関係に立つ財産管理人に就任したいとは何事か、という趣旨)。ご指摘ごもっともですが、特に地方では、人材不足?等を理由に自薦がまかり通っていることが昔も今もあったり、なかったり・・・。

 私は自薦したことは一度もないですが(やりたくても心を鬼にして・・・)、諸事情からやむを得ず自薦せざるを得ない場合でも、将来的な利益相反の可能性等、事案の分析を十二分に行ったうえでするべきでしょう(それでも想定外で起きるのが利益相反の問題ですけどね・・・)。

 さて、清算型遺贈とは、簡単に言えば、遺産である不動産等を換価処分して金銭に換えたうえで、当該金銭を受遺者に遺贈することです。

 表題の件、遺言執行者が指定又は選任されている場合、登記実務では、改めて相続財産清算人を選任しなくてもよく、遺言執行者の申請により不動産の登記名義人を相続財産法人に変更したうえで、遺言執行者と買受人との共同申請により所有権移転登記ができるとされています(登記研究619−219)。

 ところが、(元)裁判官の方々が著者の書籍(家庭裁判所における財産管理・清算の実務150頁)によると、この場合でも相続財産清算人の選任を要するものと考えるとされています。

 比較的新しくて売れていると思われる本にこう書かれているとちょっと悩ましくなりますが、登記さえできればよいというわけにはいきませんので、結局は具体的な事案に応じて採るべき手続を検討しなければならないのでしょう。

 では、仮に選任を要するとして、遺言執行者が選任申立てをする場合、自薦(認められれば遺言執行者が相続財産清算人を兼ねることになる)をすることはどうでしょうか。ちょっと考察してみると面白いかもしれません(何かの本には「可」と書かれていたような気が・・・)。