2020年12月


 広報活動(2020年12月19日・vol.318)  

 会社の安定した経営(株主総会の開催、剰余金の配当等)と将来に向けた発展(組織再編、事業承継等)のためには、株主名簿定款の整備が重要です。

                            
 株主名簿を整備しましょうチラシ@   株主名簿を整備しましょうチラシA    定款を整備しましょうチラシ@    定款を整備しましょうチラシA

 なお、会社を「たたむ」とき(解散・清算、事業譲渡)にも株主名簿や定款が整備されていないと割と大変な目遭うことになりますのでご注意を。


 クーリング・オフの順序が重要(2020年12月17日・vol.317)  



↑ お前、たいして使わねぇだろ!!と言われそうですが、思い切って買い替えました。

 さて、例えば、訪問販売で商品を購入し、代金の支払いについて個別クレジット契約(法律上は個別信用購入あっせん関係受領契約といいます)を締結したケースにおいて、後悔から販売契約と個別クレジット契約の両方を撤回(または解除)したいと思いクーリング・オフを行う場合、販売業者とクレジット会社に対して、どのようにクーリング・オフを行えばよいかが実務上で問題になることがあります。クーリング・オフの意思表示を行う相手方が2者考えられるため、どちらかに対してだけ行えば足りるのか、あるいは、両方に対して行う必要があるのか、また、両方に行う場合はその順序はどうすればよいのか、について疑問があるからです。

 この点について、法律は、割賦販売法35条の3の10において規定があり、まず、クーリング・オフについては、クレジット会社に対してのみ行えば販売契約と個別クレジット契約の両方が撤回等されたものとみなすとされています(同条5項)。また、この方法によりクーリング・オフを行った場合は、クレジット会社は申込者等に対して未払金の請求はできず、また、既受領金については申込者等に対して返還しなければならないとされています(同条7項、9項)。その結果、販売業者は、クレジット会社からの既受領金(立替金)を同社に対して返還しなければならないとされています(同条8項)。法律上は、一応このような清算ルールがあるわけです。

 では、上記のケースにおいて、販売契約の方を先にクーリング・オフした場合はどうなるのでしょうか。その場合、上記の清算ルールに沿わないパターンとなるため、原則どおり、申込者等は、まずは販売業者から立替金の返還を受け、その上でクレジット会社との間で精算を行うことになると法律上は読めてしまいます。この場合、一般的に販売業者の方がクレジット会社よりも信用が低いため、販売業者からの回収リスクを申込者等が負わなければならないことになります。
 よって、本件のように、訪問販売で個別クレジット契約を利用した場合においてクーリング・オフを行う場合は、申込者等の側からみてより有利に既払金の精算ができるようにするために、クレジット会社に対して先にクーリング・オフを行う、または、少なくとも販売業者とクレジット会社に対して同時にクーリング・オフを行うようにする必要が実務的にはあるといえるでしょう(クーリング・オフは発信主義なので同時ならOK)。

 なお、クレジット会社に対する意思表示が販売業者にも連動するのはクーリング・オフだけなので、それ以外の意思表示(詐欺、不実告知による取消や債務不履行解除等)も販売業者に対して行う必要がある場合は、両者に個別に通知をすべきでしょう(結局、その場合はクーリング・オフも両方に同時に出すパターンになるのでしょう)。

 ちなみに、今月号の月刊国民生活の記事に、クレジット会社が本件のクーリング・オフ連動と清算ルールの主張をしなかったために敗訴した可能性のある判例が紹介されていましたので、そちらもご覧になるとよいかもしれません。



 原資が差押禁止財産である預貯金の差押(2020年12月7日・vol.316)  

 去年から今年にかけて、司法書士の仕事への影響が大きい法改正が多くありましたので、その分業務の参考にする書籍の購入費が大きく膨れ上がっています。節約のため極力研修資料で補うようにしていますが、やっぱり民法関連は書籍を買い替えざるを得ないところです。

 さて、詳細は不明ですが、12月3日の神戸新聞に神戸地方裁判所伊丹支部が持続化給付金の差押命令を取り消す旨の決定(11月19日付)を行ったとの記事が出ていました。記事の内容から見て、おそらく、債務者の預貯金債権に対する差押命令が執行裁判所から出されたことにより預貯金債権が差し押さえられたのに対し、債務者から差押禁止債権の範囲変更の申立(民事執行法153条1項)がなされ(加えて仮の支払禁止命令・同条3項)、これに対して執行裁判所が差押命令の一部を取り消したものと思われます(執行抗告と違って同じ裁判所が差押命令とその取消しの決定を行っているのがミソ)。

 通常、差押禁止財産は後記のように法律で決まっているのですが、上記の裁判所の決定の時点では持続化給付金については法律上差押禁止財産とはされていませんので(たぶん近々立法化されるでしょうけど)、あくまで個別の事例判断ということになると思いますが、めずらしい事例なので注目してみました。

 差押が禁止されている社会保障給付については、いったん預貯金口座に入金されてしまうと他の預貯金債権と一緒になって通常の預貯金債権に転化するのでもはや差押禁止財産ではないという考え方が実務上でなされているため(最判平成10年2月10日金融法務事情1535号64頁)、債権者からの申立てがあれば当該預貯金の原資を問わず差押命令が出てしまいます(裁判所は素早く差押をしないといけませんので債務者や第三債務者(銀行)に対してこの預金の原資は何ですかなんていちいち聴きません。)。

 よって、差押を受けた債務者としては、債権者の取立て(債務者に対して差押命令が送達された日から1週間経過後に可能)を止めたうえで速やかに差押禁止債権の範囲変更の申立てをしなければなりません(これが相当困難※1)。なお、これが間に合わず債権者から預貯金債権を取り立てられた後においては、不当利得返還請求により債権者から取り戻すことが可能な場合もあります(東京地裁平成15年5月28日判決、広島高裁松江支部平成25年11月27日判決)
 預貯金口座に振り込まれた債務者の生活や事業の維持・再建のための原資を保護するためにもっといい方法はないものか、と思います。

※1 民事執行法の改正(令和2年4月1日施行)により給与等の債権に対する差押については、債権者の取立可能時期が債務者に対して差押命令が送達された日から4週間経過後に変更となりましたが、預貯金債権については1週間のままです。

☆ 差押禁止財産(ごく一部のみ)
1.民事執行法152条1項(差押禁止債権):給料、賃金等の一部
2.民事執行法131条各号(差押禁止動産):生活必需品、燃料、現金66万円等
3.生活保護法58条:保護金品、進学準備給付金
4.国民年金法24条:年金受給権
5.厚生年金保険法41条1項:年金受給権
6.児童手当法15条:児童手当受給権
7.児童扶養手当法24条:児童扶養手当受給権
8.戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法11条:特別弔慰金
9.令和2年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律
10.介護保険法25条:保険給付受給権
11.国税徴収法75条〜77条



 相続登記は先手必勝になった?(2020年12月3日・vol.315)  

 行政・司法機関等の機能が停滞したり施設等に入所中の依頼者の方と面談できなくなったりすることへのおそれから、感染拡大期の最近はコロナウイルスと追いかけっこするように仕事をしていますが、急ぐことと言えば、

 民法(相続法)の改正(令和元年7月1日施行分)により、法定相続分を超える部分の権利の承継については、すべて対抗要件主義が採用されました(民法899条の2)。よって、不動産について、相続人が、

1.遺産分割により法定相続分を超える持分を取得した場合
2.遺贈により法定相続分を超える持分を取得した場合
3.特定財産承継遺言(いわゆる相続させる遺言)により法定相続分を超える持分を取得した場合
4.相続分を指定する遺言により法定相続分を超える持分を取得した場合

には、超過相続分に対して第三者の登記(差押、所有権移転等)がなされる前に相続(遺贈)登記を具備しなければ、当該第三者に対抗できないようになりました(なお、1と2は従前どおりの取扱い、3と4は改正法による取扱いの変更)。

 一方、遺言執行者の権限について、遺贈の履行は遺言執行者のみの権限とされ(民法1012条2項)、また、特定財産承継遺言があった場合は、遺言執行者は、当該相続人が対抗要件を備えるために必要な相続登記をすることができるようになったところ(民法1014条2項)、相続人による遺言執行妨害行為があった場合でも善意の第三者に対抗することができないとされたため(民法1013条2項)、遺言執行者に就任した場合は、こちらも速やかに相続(遺贈)登記をしなければならなくなりました(場合によっては民法1007条2項の通知を出すまでに登記しておくべきこともあるでしょう。)。

 という具合に、相続が開始した際に、遺言がある場合や遺産分割が成立した場合には、これまで以上に速攻で登記等の対抗要件を具備しなければならないようになったのです。特に相続人間で紛争性がある場合には尚更です。

 皆さん、少なくとも、遺言がある場合は、速やかに相続登記をしてしまいましょう。

☆ 参考条文
民法
(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

(遺言執行者の権利義務)
第1012条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
 第644条、第645条から第47条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。