2024年3月


 司法書士委任契約と消費者契約法(2024年3月30日・vol.387) 

 毎度のことながら年度の切り替わりの時期は何かと忙しいですが、それでもできるだけ月に1回は何か書いてみましょうということで、最近印象に残った話題を書きます。

 令和5年4月1日より、司法書士の業界においては、司法書士行為規範なるもの(従来の司法書士倫理に代わるもの)が施行されており、その中において、努力規定ではあるものの第23条において事件受任に際しては契約書の作成に努めるものとされており、まだ、第78条においても委任契約書の作成等による受任事務の明確化が義務付けられています。

 また、実際、司法書士業務においては、短期間で終了することが見込まれる登記手続等の業務は別として、比較的長期間に亘る委任事務の遂行が見込まれる業務(裁判事務、債務整理、遺産承継業務、遺言執行業務等)については、従来から事件の受任に際して業務委任契約書等の作成が励行されていたものと思います。

 そういうわけで、最近は、司法書士が依頼者の方から業務の依頼をお受けする場合、業務委任契約書等の何かしらの書面を取り交わすことが以前にも増して多くなってきているものと思います。

 そこで注意しなければならないのが、言うまでもなく、司法書士と依頼者の方との間で締結される業務委任契約は、事業者と消費者との間で締結される消費者契約に該当するものであり、民法だけでなく、消費者契約法が適用される契約であるという点です。
 
 したがって、契約書の作成においては、消費者契約法の規定(特に第8条から第10条の無効条項の関係)を意識して作成する必要があるのです。

 何を今さらと言われそうな話ですが、実際、この点で司法書士の業務委任契約が消費者契約法の無効条項規定に該当するのではと問題視されたケース(某適格消費者団体からの申入れを受けたケース)が最近ネット上で公表されているのを見つけました。

 記事で指摘されていた内容は、司法書士の債務整理業務に関する委任契約書の条項(契約解除条項と着手金の取扱い条項)についてでしたが、「これって司法書士が債務整理業務委任契約書で従来からよく使っていた条項例では・・・」というのが正直な感想。団体からの申入れに対する回答がなかったので公表されたとのことでしたが、これはちょっと「いろんな意味で」考えないといけないのではと思った次第です。