2021年12月


 裁判と登記(2021年12月29日・vol.349) 

 @民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)A相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)の施行日が決まったようです(法務省HP:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)。

 ちなみに、@の関連で、世間では一番注目されているであろう相続登記の申請義務化に関する施行日は、令和6年4月1日となりました。なお、すでに開始している相続に関する相続登記については、ここからさらに3年間の猶予がありますので、令和9年3月31日までに相続登記を申請するか、または、相続人申告登記を申告する必要がある、ということになるようです。
 あぁ〜、また施行日直前頃に政省令、通達がドカッと出てくるんでしょうね・・・。しっかり準備をせねば。

 さて、司法書士の仕事をしていると、自分が関わっていない裁判の資料(判決正本、調停調書、和解調書等)が持ち込まれ、登記手続を依頼されることがあります。そのときのやり取りは、たまに以下のような感じになります(内容はもちろん関西での架空の話です)。

C「せんせ、裁判所からこれ(※1)もらったから、登記(※2)やってーなー」
※1 判決正本、調停調書、和解調書等
※2 ここでは単独申請(不動産登記法63条1項)で登記申請するという意味

司「どれどれ見せてもらいましょか」
司「う〜ん、これだと単独申請はできまへんから、相手さんから印鑑証明書とか登記済証とかを提出してもらう必要がありまんな」

C「そんなもん喧嘩しとった相手からもらえるわけないやんけ。裁判所はこれでできるってゆーとるねんから問題ないやろが」

司「う〜ん、ほんならちょっと法務局に聞いてみますわな(そりゃ〜裁判所の言うことの方を信じますよね・・・)」

仕方なく法務局に照会し、数日経過

司「ね、やっぱり法務局もこれでは単独での登記申請はダメって言うてますやろ?ほんで、この場合の対処法ですねんけど・・・」

C「もうええわ。あんたには頼まん」

司「またご相談ください・・・」

 ある程度の年数、司法書士をやっていると、こんな話は何回も経験しますが、いい加減こうゆうのってどうにかならないものかとその度に思います。例えば、裁判所と法務局が事前に協議するバックグラウンドを構築するとかできないものでしょうかね。

 ちなみに、登記の単独申請に使えない内容の判決正本等を受け取った場合は、まずは、単独申請できるように判決正本等の内容の更正決定(※3)を出してもらうよう裁判所に申し立ててみることを検討するのが通常です。
※3 判決正本等の記載内容に明白な誤りがあった場合に裁判所が内容を訂正する決定

 ただし、更正決定は確定する必要があるため、更正決定を受けた判決正本等を使用して登記申請を行う場合は、裁判所から送達される更正決定正本と、更正決定が再度当事者に送達されてから2週間の即時抗告期間が経過した後、裁判所から発行してもらう更正決定の確定証明書が追加で必要です。よって、この方法だと、登記申請までに最低でも2週間以上の期間を費やしてしまうことになり(更正決定の申立てから数えると早くても20日くらいかかるかも)、裁判の紛争内容や申請すべき登記の内容によっては胃が痛くなりますのでご注意ください(目的の登記を申請する前に権利変動があったら目も当てられませんので、事案によっては処分禁止の仮処分等の保全措置は予め採っておきましょう。)。



 贈与登記と共有名義(2021年12月23日・vol.348) 

 従来からの不動産贈与登記あるあるですが、不動産を贈与する際に、贈与税を一時的に回避する目的から、受贈者の家族複数人名義で贈与による所有権移転登記がなされる事例がまま見られます(昔は特に
)。
 しかしながら、不動産の性質等にもよりますが、共有関係は最終的には解消することになる可能性が高いところ(家族関係の変化に応じて解消することになる)、解消する際は、何かしらの課税が発生する可能性が高いうえ、登記手続費用も発生しますので、結果的には、何ら得にならなかったということになる可能性も十分にあり得ます(返って高くついたなんてことも然り。)。

 また、共有関係のまま放置していた結果、共有者の一人に相続が発生し、共有関係の解消や不動産の処分が困難になったみたいな事例もよく聞かれるところです。

 一時的な贈与税の課税回避のために共有名義で贈与を受けようとされる場合は、上記のような将来的なこともよく検討したうえで決断されるとよいのではないでしょうか。

 ちなみに、令和3年の民法改正で土地の共有制度に関する改正が行われていますので(令和5年4月1日施行)、共有関係で現在困っておられる場合は、今後は改正法の内容も視野に入れて検討されるとよいかもしれません。詳しくは、お近くの司法書士まで。
    
    
    「相談したいことがあるんですけど・・・」