2016年2月


 間違いやすい相続関係 〜その6〜(2016年2月22日・vol.237) 

 今日は、ニャン、ニャン、ニャンで猫の日だそうですが、取りあげる話題は愛くるしさのないややこしいお話です。

 離縁による親族関係の終了について、現行の民法と旧民法では、その規定ぶりが異なっており、これによって相続関係にも大きな違いをもたらす場合があるため、注意が必要です。
 まずは、各法の条文を見てみましょう。

(現行民法)
第729条
養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。

(旧民法)
第730条
 養子ト養親及ヒ其血族トノ親族関係ハ離縁ニ因リテ止ム
A 省略
B 養子ノ配偶者、直系卑属又ハ其配偶者カ養子ノ離縁ニ因リテ之ト共ニ養家ヲ去リタルトキハ其者ト養親及ヒ其血族トノ親族関係ハ之ニ因リテ止ム

 各条文の規定において、今回注目するのは旧民法730条3項の「之ト共ニ養家ヲ去リタルトキハ(下線部分)」でありまして、やっぱり「家」絡みの部分になります。
 現行民法では、養子と養親が離縁した場合、養子とその配偶者、直系卑属(子、孫等)、直系卑属の配偶者と養親及びその血族(養親の子、親、兄弟等)との親族関係は無条件で消滅しますが、旧民法では、「養子が離縁に伴い養家を去る際に一緒に養家を去ったこれらの者についてのみ、養親及びその血族との親族関係が消滅する」とされていたのです。
 以下、相続を絡めた具体例を挙げてみます。

 甲家の戸主でない家族A(養親)と養子縁組をして甲家に入った養子B(乙家より)がCと婚姻しBC間に子Dが生まれている場合において、AとBが離縁し、B及びCが甲家を去って乙家に戻っている場合、子Dについては、B及びCと一緒に甲家を去って乙家に入っている場合は、AとDの祖父孫関係は消滅しますが、子Dが甲家に残っている場合は、AとDの祖父孫関係は消滅しません。
 よって、旧民法施行中において、Aが死亡した場合、Dが甲家を去っているか否かによって、DがAの相続人になるかどうかに違いが生じることになります。
 なお、上記の扱いはあくまで家制度があった旧民法上の制度であるため、旧民法施行中にAについて相続が開始しないまま民法の応急措置法が施行した場合はその時点で子Dが甲家に残っていてもAD間の親族関係は消滅することになります。

 旧民法の相続の中でもあんまり出くわさないようなマイナーなケースのお話でしたが、旧民法の相続で「縁組」とか「離縁」が出てきた時は通常以上に注意を払う必要がありそうです。
 因みに、今回省略している旧民法730条2項の問題については、『間違いやすい相続関係〜その3〜(2014年1月6日)』をご参照下さい。こっちの方が実務的には要注意かもしれません。



 マイナーな利益相反取引(2016年2月12日・vol.236) 

 司法書士等の法律に関係するお仕事をする中で、常に念頭に置いておきたい注意点として「利益相反」という考え方がありますが、今回は、利益相反の中でも特に取引行為に着目して、ちょっとマイナーな事例を挙げてみましたので、興味のある方はご検討ください。

(事例1)
 権利能力なき社団Xの構成員が総有する甲土地(登記名義人はXの役員A、B、Cの3名)を法人Y(代表者A)へ売却する場合、利益相反取引に該当するか。仮に、利益相反取引に該当する場合、不動産登記申請手続において、登記原因についての第三者の許可、同意又は承諾を証する情報(不動産登記令7条1項5号ハ)の提供を要するか。また、これを要する場合、いかなる情報を提供すべきか。

(事例2)
 株主がA1名、清算人がA1名の清算株式会社Xにおいて、残余財産の分配として会社所有の甲土地を株主Aに譲渡する場合、利益相反取引に該当するか。仮に、利益相反取引に該当する場合、不動産登記申請手続において、登記原因についての第三者の許可、同意又は承諾を証する情報(不動産登記令7条1項5号ハ)として、いかなる情報を提供すべきか。