2022年3月


 最近の法定相続情報証明一覧図保管・交付制度の運用状況(2022年3月31日・vol.354) 

 今日で3月も終わりです。特に何もありませんけど。

 さて、個人的には、結構好んで法定相続情報証明一覧図の保管・交付制度を利用していますが、@資格者証明書に原本証明をしていないA一覧図に被代襲者の氏名、続柄を記載しているとの理由で法務局から補正の指摘が入ることが最近でもありました。いずれの点もこの制度ができた当初はそのような取扱いがなされていましたが、後日、取扱いの変更がなされ(正確に言うと変更ではなく正しい理解の周知かな)、少なくとも神戸地方法務局管内の法務局では、平成31年4月1日からは両方とも疑義なく認められるようになっているはずです。そこで、取扱い変更?の旨を担当官に具体的に説明すれば、問題なく受理されることになります。なお、@はそもそも写しを添付しろとされているため、原本証明をすること自体おかしなお話なのですが。

 とはいえ、両方ともスタンダードなやり方からはやや外れているため(例えば、法務局HPの一覧図の見本ではAは記載していない)、これらの方法が採られるのは資格者代理人(ほぼ司法書士でしょう)が代理して申出手続をする場合がほとんどでしょう。

 とすれば、資格者代理人が@やAの取扱いをあまり実践していないからいまだに法務局から指摘されるのであろうか、とふと思いました。




 所有者不明土地対策関連法の施行日が決定(2022年3月11日・vol.353) 

 既にご存じのとおり、令和3年4月に成立した所有者不明土地対策関連法(改正民法、不動産登記法と相続土地国庫帰属法)の施行日が令和3年12月14日に決定されています。
 詳しくは、法務省のHP(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)をご参照ください。
 新法の内容は、司法書士的には全部重要ですが、個人的には民法関連では、第904条の3が注目株です。

民法第903条(特別受益者の相続分)
民法第904条 
民法第904条の2(寄与分)
 
民法第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
 前三条の規定は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
@ 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
A 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 要は、相続開始から10年を経過した後においてする遺産分割においては、原則として、特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分での遺産分割を請求することはできなくなる、つまりは、法定相続分(または指定相続分)で遺産分割をすることになるということです。

 そして、この規定については、法施行日(令和5年4月1日)前に開始した相続に関する遺産分割にも適用するとされています(改正法附則第3条)。すでに長期間遺産分割がまとまらずに放置されているケースにも適用されるので、具体的相続分で遺産分割をしたい場合は早くしなさいということなのでしょう。

 ただし、施行日前に既に発生している相続に関する遺産分割に対して施行日から即この規定を適用すると相続人への影響が大きすぎるので、この場合の期限については、「相続開始の時から10年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の施行の時から5年を経過する時のいずれか遅い時まで」として、5年間の猶予期間が与えられています。

 今回、この規定が施行されるにあたり、停滞している遺産分割が少しでも進むようになればよいのですが、すでに多額の特別受益を受けている相続人からすれば、早く期限が経過して欲しいと考え(その方が自分に有利)、当面の間、遺産分割を放置する方向に向いてしまいそうな気もしますがどんなもんでしょう。

 ちなみに、全く話は変わりますが、次の令和4年税制改正で租税特別措置法第84条の2の3が改正され、相続登記の登録免許税について、現行の土地の価額が「10万円以下」の土地は非課税が「100万円以下」の土地は非課税に変更される可能性が高いため、紛争性のない相続登記については4月まで登記申請を保留にしている司法書士は結構いるんじゃないでしょうか(申請対象不動産に100万円の土地が10筆ある場合は、4万円の節税になるみたいな・・・)。早くやらないとマズイ相続登記については、そんなこと言ってられませんけどね(民法第899条の2)