2022年7月


 空き家対策と死因贈与契約の活用(2022年7月20日・vol.360) 

 成年後見の業務をしていると空き家の管理が職務に入ってくることがよくありますが、夏場特有の空き家管理と言えば、草刈と蜂の巣除去なんかがメジャーな事務となります。どちらも業者の方に委託して対応することになりますが、ひと夏に何度も作業が発生すると経済的な負担も大きくなりますし、常にご近所の目も気になりますので、空き家化が確定した折には適切な時期に空き家の処分を考えたいところです。もっとも、成年後見が開始していると空き家の処分について家庭裁判所の許可が必要となる場合がありますので、できれば空き家の持ち主の方の意思能力(理解力と判断力)がしっかりしているうちに何らかの対策をとっておいた方がよいかもしれません。

 そんな中で、先日、某研修会の講義で、死因贈与契約を活用した空き家対策(借地上の建物について、建物所有者(借地人)と地主が生前に建物の死因贈与契約を締結しておき、建物所有者死亡後に空き家となった建物の所有権を地主が引き継ぐことで空き家を防止するみたいな感じ)の紹介があったので、事案が限られますが新たな空き家対策の選択肢の発見になり勉強になりました。

 もっとも、最近は時代背景(超高齢化無縁社会)もあって死因贈与契約がらみの裁判例等も散見されます(令和3年1月28日名古屋地方裁判所岡崎支部判決(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=90219)とか)。ので、先の研修の講義での活用例でもそうですが、死因贈与を執行する段階で他者から疑念を持たれないように契約内容(契約の目的を明確に、内容を適正に)、契約締結方法(公正証書にする等して第三者を関与させる)、執行方法(執行者の選任)、対抗要件具備(仮登記等をする)等について入念に準備をしておく必要があるでしょう。