2016年11月


 殺し文句〜キラーセンテンス〜(2016年11月2日・vol.250) 

 今回は、先日開催された某研修会で講師をされた弁護士先生の話がネタ元です。
 
 最近は、どんな訴訟でも陳述書を出します(裁判所からも出せと言われます)。陳述書というのは、簡単に言えば、訴訟において当事者が証明しなければならない事実について、これを証明するための一証拠として裁判所に提出する当事者本人が自ら体験した事実を記載した書面のことです(こんな定義でよいのだろうか?)。訴訟の証拠調べにおいては、本人尋問や証人尋問が実施されることがありますが、この尋問の対象となる者(本人や証人)が、自らが供述するであろう事実を予め書面に表し、これを裁判所に提出することで、その供述内容を裁判の証拠として採用してもらえたり、事件の経緯を裁判官に理解してもらえたり、後の証拠調べの尋問手続を効率よく行うことができたりするため、陳述書の作成・提出が裁判実務では頻繁に行われているのです。
 さて、この陳述書ですが、やっぱりこれも「上手い下手」がありまして、裁判官に読んでもらった結果、「なるほど、この書面に記載されていることはきっと事実なんだろうな」と思ってもらえるような内容が記載されていないといけません。そして、そのために必要なものが「殺し文句(キラーセンテンス)」となります。この「殺し文句」が炸裂するような陳述書であれば、それは上手い陳述書ということになります。
 では、具体的に「殺し文句」とはどのようなものかと言いますと、それは、「その事件に自らが関わった者でなければ語れないような具体的で生々しい事実の記載」のことをいいます。このような事実の記載が随所に散りばめられた陳述書であれば、相対的に記載内容の信用性が高くなり、結果、証拠としての価値も上がってくるでしょうから、「殺し文句」を意識して陳述書を作成することが肝要となるわけです。つまり、裁判官への「殺し文句」ということです。
 反対に、この「殺し文句」が記載されていない陳述書は、内容の信用性が低く証拠としての価値が低いものとなりますので、裁判官を口説けない手紙となってしまうのでしょう。
 もし陳述書を作成する機会がありましたら、是非、「殺し文句」を意識して作成してみると良い陳述書ができあがるかもしれませんね。