2018年11月


 相続登記の促進策(2018年11月30日・vol.282) 

 平成30年11月15日から租税特別措置法第84条の2の3第2項が施行された関係で、市街化区域外の土地で法務大臣が指定する土地のうち、固定資産税課税台帳の評価額が10万円以下である土地について行う相続を原因とする所有権移転登記(いわゆる相続登記)の登録免許税が非課税となりました。なお、平成33年(2021年)3月31日までの期間限定です。
 ちなみに、市街化区域のない篠山市の場合は市内全域の全て土地が対象となります。ただし、建物は対象外なのでお間違えなく。
 また、非課税の判定は当然土地ごとに行いますので、複数の土地の一括申請の場合で合計評価額が10万円を超える場合でも、申請対象の各土地の評価額が10万円以下であれば非課税の扱いとなります(例えば、評価額5万円の土地100筆の相続登記の場合、合計評価額は500万円ですが、非課税となります。通常計算に比べ2万円のお得ですな)。
 まぁ、実際やってみたお得感としては、少々筆数が多くても大体のケースが1,000円前後くらい安くなる程度かなという感じですけど
 ところで、条文の上では移転登記が対象となっていますが、土地の表題部所有者の相続人による所有権の保存登記(相続保存登記)の場合に本規定は適用されるのでしょうか?権利の登記すらされていない少額の土地もあるわけですが、制度の趣旨からすれば、別に移転登記に限定しなくてもよいように思いますがどうでしょう。


 共有者間の合意の拘束力(2018年11月26日・vol.281) 

 まだまだテレビやネットでは例の地面師事件関連のニュースをよくやっていますが、こういう事件には、大抵、何らかの形で司法書士が関わっていますので、つい注目してしまいます。某新聞社のネット記事によれば、偽所有者の方は売買取引に関与した司法書士から干支を尋ねられてそれを間違い、誕生日も正確に言えなかったそうですが、最終的には物的本人確認資料(偽造パスポート等)の存在の方が優先されたそうな。この件がどうだったかわかりませんが、一般論として、チャンスを逃したくない買う気満々の買主からのプレッシャーを背に、何十億ものデカい金額の取引においてこんな状況に直面した場合、並の神経では取引を止められないと思いますが、どうでしょうか。さて、この件は、月報司法書士に載るのかな?

 共有者間において成立した不動産の使用方法に関する合意内容は、共有持分を取得した者(特定承継人)を拘束すると解されています(民法254条、最判昭和34年11月26日)。
 例えば、共有者A、B、Cが各共有持分3分の1で共有する甲土地について、共有者全員の間で「10年間はAが無償で甲土地全体を自由に使用することができる」旨の合意(契約)が成立していたところ、Cが自己の共有持分を第三者Dに譲渡した場合、譲受人であるDは、前記の合意の内容(Aに使用させる義務)を承継することになるので、期間内はAの権利行使を妨げるような行為はできないことになるのです。
 このような共有者間の合意事項は、共有物不分割の特約(民法256条1項但書)については登記をしなければ第三者に対抗できませんが、それ以外の事項については、登記が無くても第三者に対抗できると解されています(そもそも登記できないからやむなし)。したがって、共有持分の譲受人(D)からすれば、譲渡人(C)からの説明を受けるか、他の共有者に対して確認をするかでもしない限り、通常は共有者間の合意事項については知る術がありませんので、想定外の不利益を被るリスクもあるのです(説明しなかったCに対する責任追及(債務不履行や瑕疵担保責任)はできるかもしれませんがそれは別問題です)。
 不動産の共有持分だけでは、市場での流通性がほとんどなく、これを共有者以外の第三者が敢えて取得するようなケースはあまりないでしょうが(あっても何かしら「ワケアリ」なケース(廉価で共有持分を取得したうえでその共有不動産を必要としている他の共有者に対して共有物分割請求を仕掛けて相場以上の値段で買い取らせて差益を稼ぐことが目的の場合とか→そういう業者?も存在します。)でしょう。)、例えば、主な目的の不動産とセットで共有持分を取得するようなケースなんかはあると思いますので、その場合でも共有不動産に関する共有者間の合意事項の有無や内容については、念のため事前に調査しておいた方がよいかもしれません。