2020年4月


 登記原因の日付が不詳(2020年4月6日・vol.307)  

 本日、兵庫県司法書士会たんば支部主催の無料法律相談会の年間日程のチラシが新聞折り込みに入っておりました。皆さんご覧いただけたでしょうか?世間は新型コロナウイルスで大変ですが、是非ご活用ください。

 それはそうと、令和2年4月1日と言えば、司法書士の業務に大きく関係する法律の改正が以下のとおり目白押しです。

@ 改正民法(債権法・意思表示、時効、契約、保証等)
A 改正民事執行法(財産開示関係)
B 改正民法(特別養子縁組関係)
C 改正民法(相続法・配偶者居住権関係)
D パートタイム・有期雇用労働法(労働者の正規・非正規での不合理差別の禁止等)

 @、Cは登記業務にも影響が大きい、Aは養育費不払いに対する強制執行の手続において影響が大きい、Bもとりあえず知っておかないとマズイ、Dは日頃お付き合いのある中小企業さんが対象となるのは来年ですがそれまでに質問くらいはあるかも・・・、もうお腹いっぱいですな。

 さて、ようやく本題。

「わし等、昔にこの土地を売買したんやけど、登記し忘れていたから登記してんかぁ」
「昔と言うと、いつごろで?契約書か代金の領収書はありまへんの?」
「日付なんて忘れたがな。契約書も領収書もどっかいってあらへんわ」

 当事者間において売買したことに間違いはなく、これについて争いもないわけですが、こんな場合、登記の原因日付はどのようにして登記の申請をすればよいのでしょうか?

(参考先例・実例)
@ 昭和34年12月18日付民事甲第2842号民事局長回答
 売買を原因として所有権移転登記手続の履行を命ずる判決正本をもつて、登記の申請があつた場合、売買の日付が主文にも理由中にも表示されていない場合の登記原因及びその日付については、「年月日不詳売買」と記載するほかない。

A 登記研究第567号166頁
 抵当権の被担保債権の弁済日が不明である場合の抵当権抹消登記の原因は「年月日不詳弁済」として申請できる。

B 登記研究第244号
 判決の主文又は理由中に、取得時効の起算日の日付が明記されていない場合の登記原因及びその日付の記載は、「年月日不詳時効取得」と記載する。

C 登記研究第434号・第503号
 「年月日不詳時効取得」を登記の原因とする所有権移転登記の申請は受理すべきでない。

 Aは休眠抵当権の抹消登記の場面で行うことがあり、BとCは時効の起算日が不明な場合では判決で時効取得が認定されている場合は認めるが、当事者の共同申請による場合は認めないということです。
 では、先の会話の事例では、@の先例が近いケースになりそうですが、この先例は判決による登記申請の場合なので、共同申請の場合にも適用してもよいのかちょっと疑問がでてきます(BとCの実例の件もありますし)。
 答えは、アーライ(all right)です(←メタル好きな人は「笑み」でしょう)。要は、「わからんもんはしょうがない」ということですね(虚偽や半信半疑の日付で申請するよりマシでしょう)。
※ 法務省法務総合研究所編:権利の登記288頁参照
 
 ちなみに「年月日不詳相続」なんてものがあるらしいのですが、いつ相続が発生したか分からないのに適用すべき時期の民法や相続人をどうやって認定するのでしょうね?