2021年4月


 民法、不動産登記法等の改正と新法(2021年4月22日・vol.330)  

 最近は、朝、裏山のウグイスの鳴き声で目が覚めます。ちょっと鳴き方が下手くそなのが妙にツボにはまり笑えます。

 さて、令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律案」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。とりあえず、法律案要綱に一通り目を通しましたが、改正点を大まかに挙げると以下のとおりです。

1.民法関連
@ 相隣関係(隣地の使用、設備の設置・使用、隣地の枝・根の切除
A 共有関係(共有物の使用・変更・管理・管理者選任・共有物分割・相続共有物・所在不明共有者の持分取得・譲渡など)
B 所有者不明土地・建物関係(裁判所の管理命令管理人の権限・義務等)
C 相続関係(相続財産管理人選任、特別受益・寄与分の主張期間の制限、遺産分割の禁止、相続放棄者の管理義務、相続財産清算人への名称変更)

2.不動産登記法関連
@ 遺贈による所有権移転登記の単独申請
A 買戻特約の抹消登記の単独申請
B 除権決定による登記の抹消
C 解散法人名義の担保権の抹消登記の単独申請
D 所有権登記事項の変更(法人、国外居住者)
E 相続・遺贈・遺産分割登記の申請義務(3年以内、過料10万円)
F 相続人申出手続
G 登記名義人死亡による付記登記
H 氏名・住所変更登記の申請義務(2年以内、過料5万円)
I 職権による氏名等の変更登記
J 証明書への住所に代わる事項の記載
K 所有不動産記録証明書の交付等
L 登記簿付属書類の閲覧

3.非訟事件手続法関連(上記民法改正に伴う手続の管轄、公告手続、不服申立、供託等)

4.家事事件手続法関連(上記民法改正に伴う供託、事件終了事由、申立取下げ等)

5.土地所有権国庫帰属法
@ 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認申請手続
A 承認申請できない不動産
B 承認申請書、添付書類、手数料
C 承認申請の却下
D 承認対象外不動産
E 事実の調査と資料の提供
F 負担金の国庫納付
G 国庫帰属の時期、国庫帰属地の管理
H 承認取消しと損害賠償責任

 こうして見ると、ほぼ全ての改正事項が司法書士の業務に関係していることが分かります。あぁ、今年も研修受講に膨大な時間を費やし、関連書籍の購入に膨大な費用を費やすことになるのね




 住所更正登記など(2021年4月7日・vol.329)  

 前回(5年前)同様、いつのまにか開業15周年記念日(令和3年3月10日)が過ぎていました。やっぱり忘れますねー。

1.不動産登記において登記名義人の住所が誤って旧住所で登記されている場合(土地改良や土地区画整理などの着手から登記申請までに比較的時間がかかる登記や司法書士が依頼を受けてから申請までの間に時間をかけた場合に起こりがち)、旧住所、旧住所から新住所へ異動したこと、異動年月日、新住所のすべてが記載されている住所証明書(住民票写し、戸籍の附票)のみを申請書に添付すれば、住所の更正登記が可能である、というのが実務の取扱いです(特に根拠となる文献は見たことないですが、一般向けのハウツー本にはそのようなことが書いてあります。)。
 一方、登記名義人の住所が何かしらの理由から過去に住んだこともない全くでたらめな住所で登記されている場合は、そう簡単にはいかず、先の住所証明書のほかに、事案に応じて、不在籍・不在住証明書(その登記された氏名の者が登記された住所にかつて存在しなかったことを証する情報)、固定資産税の納税(課税)証明書、当該不動産の前登記名義人や関係登記名義人・地区の公職者・隣地所有者(居住者)、申請人自身等が作成した証明書(上申書・印鑑証明書付)などを添付する場合があります。

2.広範な土地(例えば5000u以上)の売買をする場合、公拡法(公有地の拡大の推進に関する法律)や国土法(国土利用計画法)の届出の要否を検討する必要がありますが、農地の売買の場合は、事前に農地法第3条第1項の許可を受けるため、これらの届出は不要とされています(公拡法第4条第2項第9号・同法施行令第3条第4項、国土法第23条第2項第3号・同法施行令第17条第1号・第6条第7号)。これは、許可申請の審査の過程において、そうゆうところも処理しているってことかな?

3.例えば、「土地の境界から塀が10センチメートルはみ出ているから撤去しろ」と隣地の所有者が主張する場合、隣地の所有者がその越境により特に何ら被害を被っていない場合は、具体的な事情によっては、権利の濫用だとして認められないこともあったりします。木の枝の越境の場合も然りです。認められないだけならまだしも、反対に訴訟提起が不法行為だとして訴えられることもあるようです。空き家が増えてくるとこのような争いも増えてくるのでしょうね(手入れされていない空き家に対する日頃から蓄積された鬱憤が爆発するようなことが起こるのではないかと思います。)。

4.複数枚からなる文書にページ番号をふる場合、契約書なんかでは基本的に「1,2,3・・・」ではなく、「1/3、2/3、3/3」みたいな感じで番号をふります。一応、最終ページの抜き取り防止が主な目的ですが、実際にその効用を感じたことはありません。この実務慣行も電子契約になったら無用となるのかな。