2015年9月


 恐るべし!!名変、名更(2015年9月30日・vol.231) 

 登記実務の業界用語?で「名変」とは登記名義人の表示(住所、氏名等)の変更登記の略称で有り、「名更」とは登記名義人の表示(住所、氏名等)の更正登記の略称です。そして、変更と更正の違いは、現在登記されている登記名義人の表示の変更が登記された後に生じたのか登記される前に生じていたのかの違いであり、前者の場合は登記内容に事後的に変更が生じたわけだから変更登記をし、後者の場合は登記した時点で登記内容に誤りが生じているわけだから更正登記をすることになります。
 例を挙げると以下のとおりです。

1.甲土地の所有権登記名義人
 平成27年9月28日受付第7000号
 兵庫県篠山市東吹513番地  稲山昌吾

2.乙土地の所有権登記名義人
 平成27年9月30日受付第7200号
兵庫県篠山市東吹513番地  稲山昌吾

 仮に、私が平成27年9月29日に住所を東吹513番地から東吹514番地に移転していた場合、甲土地については住所の変更登記を申請し、乙土地については住所の更正登記を申請することになります。この判断の仕方は、登記の受付年月日と住所移転の年月日の前後で判断することになります。
 実際、設例のような登記はたまに見かけるところでありまして、おそらくその原因は、甲土地の登記をしたときに使用した住民票を乙土地の登記の際もその間の住所の変更を知らずに使用してしまったことにあると推測できますが、このようなことは本人が登記申請に直接関与せずに行われたような場合に特に起こりがちだと思います(司法書士が代理人として申請している場合でもこのケースは見かけます)。
 因みに、先の事例の場合において、住所の変更登記と更正登記を申請する場合、登記の実務においては甲土地と乙土地について各別に登記の申請をしなければならず、一括で申請することはできないとされています。したがって、各土地の登記年月日が近接しているため、うっかり両土地とも変更登記と思い込んで申請してしまうと、補正では対処できず、申請の取り下げになるので注意が必要です。まして、名変(名更)に続いて連件で抹消登記、移転登記、設定登記の申請をするような案件でこのミスをすると全件取り下げという大変な目に遭うことになり、これを司法書士がやってしまうともうお陀仏です(―_―)。ああ恐ろしや〜。
 皆さん、「たかが住所の変更」と侮らず、慎重に名変か名更かの判断をするようにしましょう。