2018年9月


 買戻特約の期間計算(2018年9月22日・vol.278) 

 いわゆる公団(がらみ)分譲物件(土地、マンション)については、購入時の契約で買戻特約が付されているケースが多いですが(法律で義務付けられている例として新住宅市街地開発法第33条第1項等、転売目的の購入の防止が目的)、既に買戻期間が満了しているにもかかわらず抹消登記がされないまま放置されているケースが間々あります。
 さて、この買戻特約の抹消登記手続ですが、司法書士的には特にこれといって難しい登記手続ではありませんので、買戻権者(公団等)の協力が得られれば、比較的簡単に手続ができてしまいます(もっとも、個人名義の古い買戻特約の場合は結構やっかいですけどね。)。
 ただ、若干悩むことがあるとすれば、買戻期間の満了日の計算、ひいては登記原因である「年月日買戻期間満了」の原因日付がいつなのか、という点でしょうか。
 この点については、登記実務における考え方はすでに固まっており、原因日付は、「買戻特約の期間満了日の翌日」となります。ただ、期間の計算方法(民法第140条により起算日として初日を算入するか否か)によって日付が1日違ってきますので、あくまで登記原因日付を正確に判断しなければならない司法書士としては、ちょっと考えなければならないところなのです。
 まず、登記されている買戻特約の買戻期間が「平成20年9月1日から平成30年8月31日まで」となっている場合、登記原因日付は、平成30年9月1日となります。このケースは、単純に期間満了日(平成30年8月31日)の翌日である平成30年9月1日となるため簡単です。
 次に、登記されている買戻特約の買戻期間が「平成20年9月1日から10年間」となっている場合、期間の計算方法として、初日を算入するのか(民法140条但書)、初日を算入しないのか(同上本文)を判断しなければなりません。この場合の判断方法については、具体的な買戻特約を定めた契約時点や買戻期間の定め方により判断することになります。以下、場合分けして考えてみます。

 1.売買契約日(買戻特約日)が平成20年9月1日、買戻期間の定めが「平成20年9月1日から10年間」の場合
 → 通常、契約は初日の途中なので、原則どおり初日不算入で計算し、登記原因日付は「平成30年9月2日買戻期間満了」となります。

 2.売買契約日(買戻特約日)が平成20年9月1日、買戻期間の定めが「平成19年9月1日から10年間」の場合
 → 初日を過去の一時点と定めた原因から判断して、初日を算入するか否かを判断することになります。通常は、初日算入で計算する場合が多いと思いますので、登記原因日付は「平成29年9月1日買戻期間満了」となります。

 3.売買契約日(買戻特約日)が平成20年9月1日、買戻期間の定めが「平成20年12月1日から9年間」の場合
 → このようなパターンはあまり見たことないですが、判例上、買戻期間が売買契約日から10年以内であれば有効とされているので、このパターンもありでしょう。この場合は、初日算入で計算することになりますので、登記原因日付は「平成29年12月1日買戻期間満了」となります。

 結局のところ、買戻特約の効力発生が一日の途中なのかどうかで買戻期間の起算日として初日を算入するか否かを決めることになるわけです。なお、関連文献でも考え方がいろいろ書いてあるため、異論もあるかもしれませんが、ご参考まで。


 こいつは使えるぜ!!(2018年9月5日・vol.277) 
 台風一過、私の事務所所在地(篠山市の西の方)では、20号のときはかなり風が強かったですが、今回の21号は、それほどでもなかったです(もっとも事務所周りはゴミだらけになりましたので、今日は朝から大掃除をしましたが)。ところが、同じ篠山市内でも、風がかなり強いところもあったようで(特に東の方)、進路のわずかなズレ具合で、こんなに影響が違うのかと改めて感じた次第です。
 さて、昨年から始まった法定相続情報証明制度ですが、思いのほか、最近よく利用しています。なんといっても、あの分厚い戸籍謄本の束の情報がA4用紙1枚程度に集約されるので、相続登記はもちろん、預貯金等の各種相続手続においても、申請人の側では使い勝手が非常によろしいのです。登記手続でいえば、添付書類の量が少なくて済むので、添付漏れ等の過誤も防げるし、書類を郵送する場合の郵送料もちょっとはお安くなります(経済的)。
 他方、情報を受け取る側では、登記所以外の各機関の対応でいうと、窓口段階では「ん??」の反応がまだまだありますが、その場合でもいったん奥に下がって戻って来られたときには、「これでOKで〜す!」となりますので、結構浸透してきているように感じます(ただし、一覧図だけでなく、念のためとして戸籍謄本の原本の確認を要求されるところも結構あるように感じますけどね)。また、裁判所や公証役場でも一部の手続に利用できるところも出てきていますので、この点でも使い勝手がよくなってきているように感じます。
 というわけで、今後は、各種相続手続の第一段階の手続として、法定相続情報証明制度が利用されていくのではないかと思います(制度のメインの趣旨である相続登記の促進に繋がっているかどうかは微妙ですが・・・)。
 もっとも、この制度が浸透すればするほど、万一、間違った法定相続情報一覧図が作出されて、それをもとに各種相続手続がなされてしまった場合は、極めて大変なことになりますので、相続情報の調査の段階で関与する専門家としては、当然、従来からの相続登記手続以上に神経を使いますけどね(間違っていた場合、それは情報内容を作成した司法書士の責任か?認証した法務局の責任か?どっちもでしょう。)。