2017年11月


 影響テクニック(2017年11月17日・vol.265) 

 某消費者情報誌を読んでいると、影響テクニックという記事に興味がそそられました。記事の趣旨は、悪質商法等のさまざまな勧誘に対する注意喚起だと思いますが、勧誘する側の勧誘テクニックの一種として人間関係にかかわる「影響テクニック」というものが紹介されていました。以下、「影響テクニック」の例をご紹介(ちょっとアレンジしています)。

1.人間関係の利用
 既に一定の人間関係がある場合は、相手の「良好な人間関係の維持」を望む気持ち(友人、近所付合い等の人間関係を壊したくない、あるいは、友人や知り合いを喜ばせたいという思い)を利用する手法(例えば、マルチ商法とかでよく使われますが、世間一般でも何かの署名活動等で同様なことが生じているのはご存じのとおり)。

2.人当たりの良さの演出
 初対面では、ルックス(外見)を整え、笑顔で、明るいトーンで話し掛け、第一印象を良く見せる手法(第一印象は後でなかなか変更されにくいそうです)。

3.類似点の強調
 勧誘する相手との類似点(同郷である、出身校が同じ等)を強調することで同属性を認識させ、親近感を覚えさせる手法。

4.共感の表明
 嘘でも相手と同じ考え、気持ちであることを表明し、親近感を覚えさせる手法。

5.返報性(お返し)の原理
 「以前、自分を助けてくれた人が困っているので今度は自分が助けてあげよう」という相互支援の気持ち(一種の社会的ルール)を利用し、以前に何かしらで助けてあげた相手の「お返しをしなければ」という気持ちを利用する手法(悪質な場合は、意図的に恩をきせて、相手の罪悪感から勧誘等に応じるように仕向けることもあるでしょう)。先に粗品を渡してから、何かを売りつけるのもこの手法なのかな?

 ちなみに、影響テクニックを利用した悪質な勧誘等に対する防衛方法としては、「初対面なのに親しくしてくる人、親しくなった人には注意する(特にあなたのためを思っている、あなたの味方であるというような姿勢を見せている人には要注意)」ということでした。また、人間関係を利用した働き掛けについても、人間関係は時とともに変化する可能性もあり、また、その働き掛け自体が人間関係を破壊する行動にもなり得るわけですから(例えば、マルチ商法の勧誘活動で友人関係が破綻する例はよく言われる話です。)、関係性に流されず、冷静かつ客観的に状況を見て判断、行動をすることが重要であるとのことです(難)。
 きっと、悪質でなくても成績優秀な営業マン(レディ)は、影響テクニックを駆使しまくっているのでしょうね。


 時間が解決!?(2017年11月14日・vol.264) 

 時間が解決してくれる法律上の制度といえば、まず時効が思い浮かびますが、登記手続上の問題で時間が解決(?)してくれることもあったりします。
 よくある例では、例えば、農地を宅地に転用する目的で売買をしましたが、農地法5条の許可が得られなかったため、無断転用(もちろん違法です。)をしたものの、所有権移転登記ができていない、あるいは仮登記の状態のままで長年にわたり放置されているようなケースがあります。
 まず、農地を農地以外のものにするために農地の権利を移転する場合には、都道府県知事等の許可を受けなければならず(農地法5条)、当該許可がなければいくら売買契約をしたとしても所有権は買主に移転しません。もちろん、買主名義への所有権の移転登記もできません。
 また、前記の農地法の許可を受けずに、無断で農地を農地以外のもの(宅地等)に変更した者は、原状回復命令の対象となるうえ(農地法51条1項)、重い罰則(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)が科されますので厳禁です(農地法64条1項1号)。
 もっとも、違反転用がなされたまま、何十年も経過しており、もはや原状回復も容易ではないような土地もまま見受けられ、当該土地について、権利関係を明確にし、これを登記に反映させる必要がある場合も現実にはあります。
 さて、そのような場合にどのような手続をとれば、実体と登記を合致させることができるでしょうか?
 まず、当初の農地の売買契約は、農地法5条の許可を得ることを停止条件とする条件付売買契約であると考えられます。そして、当該農地法5条の許可があれば、農地の所有権は買主に移転することになります。ところが、この許可が得られないまま、いつの間にやら農地が農地でなくなってしまったわけです。そうであれば、当初の売買契約の条件はもはや達成不能であり、また、対象土地が農地に該当しなくなった以上もはや農地法の適用は受けませんので、当初の売買契約は非農地化した時点で法定の条件が消滅した無条件の売買契約になったと考えられます。よって、対象の土地の所有権は、非農地化した日付をもって、売主から買主に売買により移転したことになります。
 では、次に、どのように本件の所有権移転登記を申請するかですが、まず、対象の土地の登記上の地目が農地のままでは、農地法の許可書の添付がない限り、所有権移転登記の申請は受理されません。よって、前提として、農地から非農地への地目の変更登記が必要となります。また、当該地目の変更登記の申請にあたっては、基本的に非農地証明書を添付することになりますが、この非農地証明書は、対象土地が、一定の要件(周囲の状況から見て、その土地を非農地と判断しても特段の影響がないと見込まれ、かつ、非農地となってから20年以上経過しており、農地法51条の違反転用処分を受けておらず、農振法の農用地区域内の土地でもないこと)を満たしていれば、 農業委員会に申請すれば発行されるものです。なお、地目変更登記を申請する場合、変更の原因及びその日付は、後の所有権移転登記の原因年月日に直結してくるため、具体的に年月日まで特定して申請する必要があります。
 最後に所有権移転登記(仮登記の本登記も含む。)の申請ですが、農地から非農地に変更した日付の売買を原因として申請することになります。もちろん、農地法の許可書の添付は不要です。
 なお、当初の売買契約の当事者が既に死亡しており相続が発生しているケースもよくあり、その場合は、さらに登記手続上の工夫が必要となりますが、今回は割愛します。
 最後に、今回みたいなネタは、膨大な時間の経過と一昔前のある種の緩さ?があいまって初めて生じる結果ですから(まさに時間が解決)、当然ですが、今から意図的になせる業ではありませんので、お間違えなく(違反転用、それ違法です!!)。