2022年1月


 抵当権設定登記と債務承認契約(2022年1月27日・vol.351) 

 今月号の月報司法書士で一番印象に残った記事は、我が業界では知らない人はいないであろう某大学教授先生に対し某司法書士から不躾な「遺産分割協議証明書」が送られてきたという残念なお話でした。まだ読んでいない人は読んでみましょう

 さて、何かしらの金銭債務の負担を伴う裁判上の和解や調停が成立した場合の和解(調停)条項において、当該債務の不履行に備えた担保として債務者等が所有する不動産に対する抵当権設定契約条項及び登記手続条項が定められることがあります。

 そして、この場合に行う抵当権設定登記の登記原因(ここでは債権の発生原因)が具体的に記載されていないことが多いため、司法書士的にはちょっと頭を悩ませることが多いのです。

 「年月日和解?調停?債務承認?・・・」

 どうしても調書等の記載から具体的な登記原因が読み取れない場合、実務では、「年月日債務承認契約年月日設定」とする例が多いのではないかと思いますがいかがでしょう?

 参考先例:昭和58年7月6日民三3810号通達




 商業登記情報を利用した企業調査(2022年1月7日・vo.350) 

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 令和4年1月31日から実質的支配者リスト制度(BOリスト制度)が始まります。

 企業側から商業登記所(管轄の法務局)に対して申出(申出書と添付書類を提出)を行うことにより、登記所から実質的支配者リストの写しの交付が受けられるという制度ですが、主にマネーロンダリング防止や企業コンプライアンスの観点に基づく金融機関等からのリストの提出要請を契機とした利用が想定されるようです。

 法務局関連の手続になりますので、司法書士の出番ということで、相談があれば対応できるよう、準備しておかなければなりません(BOリスト制度利用の前提となる株主整理作業も含めて)。

 ところで、このBOリスト制度の関連で某登記情報誌に企業調査に関する紹介記事が載っていましたが、その中で、商業登記情報から分析される企業の評価について書かれていたのが結構興味深かったです。例えば、本店移転や役員変更の登記の頻度が多すぎる場合はマイナス評価になり得る、事業の目的に不動産賃貸業を追加した場合は本業の低迷が推定される等と書かれており、企業調査会社は企業の登記記録からいろいろと細かい情報を拾っていく作業をしていることがわかりましたので、商業登記手続の依頼を受ける司法書士としてもクライアント様の事情を推察する際のちょっとした参考になるなと思いました(もちろん一概には言えないような事柄ですけどね)。

 BOリスト制度も商業登記制度と同様、今後は企業調査の際に大いに活用されていくのでしょうね。